【ATTAニュース】2024ATDI に見る「アジア・太平洋地域におけるアドベンチャーツーリズムのポテンシャル」
2月5日のATTA Newsよりご紹介いたします(原文はこちら)。
ATTAのDirector of Researchであるヘザー・ケリー氏が「Adventure Tourism Development Index (ATDI)」に関するレポートをATTA NEWSに寄稿されましたので紹介いたします。
ATDIは、ジョージ・ワシントン大学国際観光研究所(GW)とATTAの共同開発により発表された、186カ国のATデスティネーションの競争力と可能性を評価する唯一の国レベルでのランキング指数です。このランキングは、さまざまなグローバルデータベースからの包括的で客観的なデータと、専門家の審査や調査により導かれたものです。
ATDIについてはこちら。 ※「2024ATDI」 は、ATTA MEMBERに登録することでDL可能です。
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By Heather Kelly 28 January 2025
最近発表されたAdventure Tourism Development Index 2024(ATDI2024 / アドベンチャーツーリズム開発指数2024)は、パンデミック後のアドベンチャーツーリズム(AT)の状況を新たに概観し、AT市場をリードしている目的地にスポットライトを当て、本物で革新的な旅行体験に対する需要の高まりに応えることで、各国がATの経済的および社会的利益を引き出すための重要なヒントを提供しています。
2024ATDIの上位には、アジア太平洋諸国(APAC)の先進経済国である、ニュージーランド、日本、オーストラリア、シンガポール、韓国、といった国々が名を連ねています。しかしながら、APACの新興経済国および発展途上経済国(22か国)もATにとって重要な市場であることから、ATTAではこの広大なAPAC地域の新興&発展途上経済国に焦点を当てるため、この地域を「東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、南太平洋島嶼国」と、より小さな地域に細分化して詳細な調査を行いました。
東アジアと東南アジア: 確立されたプレーヤーと新進気鋭のプレーヤーの混在
東アジアには多様なAT目的地があり、その先頭を行くのがタイです。よく整備されたインフラ、ポジティブなイメージ、発達した交通網により、タイはAT旅行者にとって最高の選択肢となっています。しかしながら、タイがその地位を維持し、長期的な成功を確実にするためには、「観光開発における持続可能性」についてプライオリティを上げていく必要があります。ベンチャー精神が旺盛でビジネス環境が良好なマレーシアでも、ATの未来を確実なもととするためには、「持続可能性」を更に追及する必要があります。
中国は、豊かな文化遺産と強固なインフラを備えており、すでに有力なAT目的地の候補として見做すこともできますが、より多くのAT旅行者を惹きつけるためには、国際的なイメージアップを図ることと医療サービスを改善することがカギとなるでしょう。一方、手つかずの自然と独特の遊牧民文化を持つモンゴルは、自然資源と文化資源に大きなポテンシャルを持っています。ベトナムとインドネシアも有望ですが、東南アジア地域での競争力を高めるためには、ATコンテンツの提供内容の改善に注力する必要があります。
南アジア:安全性と文化遺産がアピールの原動力
南アジアでは、ブータンが安全性と環境保護に力を入れているという理由で一歩抜け出しています。長年にわたり持続可能性を求める国民の慣行と独自の文化遺産への取り組みにより、ブータンは環境意識の高い旅行者にとって魅力的な目的地となっています。
しかしながら、南アジアの他の国々は、ATの可能性を最大限に引き出す上での課題に直面しています。たとえば、インドにおいては、観光部門は発達しているものの、安全性、健康不安や持続可能性に関する懸念に対処する必要があります。
中央アジア:未開拓の可能性が呼び起こす
中央アジアでは、ATの発展に関して複雑な状況が見られます。カザフスタンとキルギスタンは、環境整備と気候変動への対応が強いために際立っていますが、より多くのAT旅行者を引き付けるためには、インフラを改善し、国際的なイメージを高める必要があります。ウズベキスタンも、環境整備は良好であるにもかかわらず、自然地域の保護と地域文化の促進といった面では遅れをとっています。
南太平洋諸島:自然の驚異と持続可能性の実践
フィジーは南太平洋諸島(諸国)の中でAT市場を牽引しており、持続可能性と安全性を重視した観光産業を誇っています。天然資源の維持管理をさらに改善していくことで、環境意識の高いAT旅行者にとっての最高の目的地として、その地位を固めることができるでしょう。手つかずの海洋環境で知られるパラオも大きな可能性を秘めていますが、観光インフラの開発と、より幅広い層に訴求する魅力的なプロモーションが課題です。
サモアはベンチャー精神に富み、AT観光の主要プレーヤーになる可能性を秘めています。しかしながら、インフラ整備の制約に対処して、世界的なイメージを高めることが、より多くの観光客を誘致するためには不可欠です。同様に、バヌアツとトンガは、安全で気候変動に強い環境を提供しながら地域内で効果的に競争していくためには、資源の管理、インフラ整備、世界に向けたプロモーションを改善する必要があります。
前進するために…
APACは、「持続可能な体験型観光に対する需要の高まり」「手つかずの天然資源と文化遺産の豊富さ」「新しいアクティビティ開発」といった多くの観点で恩恵を受けている地域といえます。しかしながら、一方では、インフラ整備や環境面における持続可能性、安全性とセキュリティ、といった側面で課題に直面しています。
2024ATDIは、APACにおける新興経済国および発展途上経済国がダイナミックなAT市場を乗り切るための貴重なガイドとなるでしょう。持続可能な慣行を取り入れ、インフラに投資し、独自の自然と文化の資産を活用することにより、これらの国々は、環境とコミュニティの長期的な健全性を確保しながら、AT旅行者に忘れられないような体験価値を提供していくことでしょう。
以上
(JATO翻訳)