アドベンチャーツーリズムとはAdventure tourism
世界的な自然・健康志向の高まりやサステナブル意識の高揚により、高付加価値な自然文化体験型観光としてのアドベンチャーツーリズム(以下AT)が注目されています。ATとは「アクティビティ体験、自然体験、文化体験の3つの要素のうち、2つ以上の要素で構成される旅行」のことです。(Adventure Travel Trade Associationによる定義)
ATとは旅行者が地域独自の自然や地域のありのままの文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態です。“アドベンチャー”という言葉から、強度の高いアクティビティを主目的とすると連想されがちですが、アクティビティは地域をより良く知り、地域の方々と深く接する「手段」の一つであり、近年はハードなものより、むしろウォーキングや文化体験等のソフトで身近なものが主流となってきています。
AT旅行者の特徴として、教育水準の高い富裕層の割合が高く、平均で14日間と長期の滞在を好み、アウトドアギア(用具、装備)にもこだわる層が多いことから、経済波及効果が高く、北南米・欧州・豪州の主要地域ではそれぞれの国内市場を除く海外での消費額のみで推計6830億ドル(76.5兆円)の経済効果があるとされています。また旅行者の旅行目的地選定にあたっては、その地域の魅力そのものはもちろん、旅行者がATを通じて、地域の自然・社会環境のサスティナビリティ、地域住民の雇用・所得向上に貢献できるかといった視点が重視されるなど、従来の旅行とは違った観点で構築された質の高い旅行プログラムが求められます。
アドベンチャーツーリズムは地域産業にとって「救世主」となりうる取組み
ATの取組みは自然や文化や地域を大事にしながらも、経済的な成り立ちの重要性を理解しており、地域資産を観光を通じて経済価値に結びつける取組であると言えます。

サスティナビリティに貢献するAT旅行者の消費形態
地域に1万米ドルの経済効果を生み出すためには、マスツーリズム(クルーズ等)の旅行者では100人が必要ですが、ATの旅行者では僅か4人の来訪で達成できると試算されています。つまり、ATではより環境等へのインパクトを抑えながら、経済効果を生み出すことができます。さらに、旅行消費額のうち地域に還元される経済効果については、マスツーリズムでは僅か14%に留まるのに対し、ATでは実に65%が地域に還元されるという調査結果もでています。その結果、10万米ドルの経済効果で生み出される地域の雇用は、マスツーリズムでは1.5人ですが、ATでは2.6人となり、地域での雇用創出効果はATの方が1.7倍もあるということも確認されています。
地域経済に貢献するAT

出典 : Adventure Travel Trade Association