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【ATTAニュース】e-BIKE(電動自転車)と従来型自転車を利用したツアーの可能性と課題

9月18日のATTA Newsよりご紹介いたします(原文はこちら)。

 米国ワイオミング州ジャクソンを拠点とするフリーランスのライター兼編集者であるクリステン・ポープ氏が、「e-BIKE(電動自転車)と従来型自転車を利用したツアーの可能性と課題」についてATTA Newsに寄稿されましたのでご紹介いたします。

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By Kristen Pope  16 September 2024

 ATTA、欧州自転車連盟ユーロヴェロ、CycleSummit が近日発表する調査によると、現在、サイクリング ツーリズムがブームになっており、調査対象のツアー オペレーターの 64% では、ゲストの 4 分の 1 以上が e-BIKE に乗っています。ほとんどのツアーオペレーターは、従来型の自転車とe-BIKE の両方を提供していますが、e-BIKE を提供していないのはわずか 7%、e-BIKE のみを提供しているのは 4% です。両方のタイプのサイクリング体験を提供することで、より多くの機会が開かれる可能性がありますが、新たな課題も生じる可能性があります。

 e-BIKE は、グループの先頭と最後尾で格差が生じることが少ないばかりか、従来の自転車ではついていけない人にも利用しやすくなるという、優れたイコライザーになり得る利点があります。人々はより遠くまで走れるので、さまざまな体力や経験レベルが混ざったグループに魅力的な選択肢となります。しかし、経験豊富なツアーオペレーターの多くは、e-BIKE で旅行する際には、トレーラーが通れる場所などのロジスティックスの問題から、バッテリー管理、グループ力学の管理までといったようなさまざまな考慮すべき事項があるため、従来のサイクリング ルートをe-BIKEのルートに単純に置き換えないよう警告しています。

 南米チリの「チリ・ナティボ・トラベル社」の創設者、ゴンサロ・フエンサリダ氏は、過去10年間のサイクリング旅行を含め、23年間にわたりアドベンチャーツアーを提供しています。同氏の会社は、砂利道をe-BIKE で走り、トーレス・デル・パイネ国立公園近くの牧場を訪れる「エスタンシアス& e-BIKE」のツアーを提供しています。同氏は、e-BIKE はツアーでの平等化に非常に役立ち、多世代旅行にも役立つと語っています。年配の家族が、スピードを出すティーンエイジャーのペースに簡単についていけたり、初心者のサイクリストが経験豊富な家族についていけたりするからです。「e-BIKE のよいところは、先頭と最後尾の差がわずか5分しかないことです」と同氏は言います。

© Chile Nativo Travel

 パトリシア・ドウ氏は「ウィルダネス・アイルランド社」のマネージング・ディレクターで、同社は10年以上にわたりサイクリングツアーを提供しており、多くのツアーでは、従来型の自転車か、e-BIKE を選べます。「カップルの一方が、1日60~80キロもの距離を喜んでサイクリングするような熱心なサイクリストで、もう片方が単にツアーに同行したいレジャーサイクリストのレベルのようなカップルにとっては、e-BIKE はとてもうまくいくことが分かりました。その点では、平等化がうまく図れます」と彼女は言います。 

 ドウ氏によると、e-BIKE は、「ロードサイクリングツアーは考えていないが、自転車でアイルランドを探索し、景色、音、匂いを実際に間近で体験し、徒歩よりも少し長い距離をカバーする機会を利用したい人」にとって魅力的なツールです。同社は2024年に、ロードサイクリングツアーとは異なるオペレーションとなる初の e-BIKE ツアーを提供しました。「参加者のサイクリングのペースは様々で、人々が求めている体験も少しづつ異なります。人々はより体験的で、より多くの文化を求めており、単に距離を稼ぐためにそこにいるのではありません。」と彼女は言います。

 クリスチャン・レヴィ氏は、2003年からチリでサイクリングツアーを提供している「アミティツアーズ社」の創設者兼CEOです。同氏は、「サイクリストのタイプによって求めるものが異なる」ことに気づいたと言います。「マウンテンバイク愛好家はより自立していて、サイクリングに本当に集中しています」とレヴィ氏は言います。「彼らはどのようなサイクリング体験ができるかに基づいてツアーを選ぶ傾向があります。宿泊施設は妥協できます。テント、ティピ(アメリカ原住民が利用していた移動式住居)、キャビン、または簡易ロッジで寝なければならない場合でも、サイクリング体験が壮大であるなら、そのツアーに参加するでしょう。」

 マリア・エレナ・プライス氏は 米国の「エクスペリエンスプラス社」 の共同所有者で、彼女の会社は 1972 年からサイクリングツアーを提供しています。彼女は、e-BIKE のツアーを計画する際には多くの点について考慮をしなければならない、と言います。たとえば、e-BIKE を運ぶトレーラーは一部の道路を走行できない可能性があるため、ツアーオペレーターはトレーラーを安全な場所に降ろして後で回収する必要がある場合があります。彼女は、e-BIKE のバッテリーを管理する方法について参加者に教育することも重要だと言います。「一部の e-BIKE では、60 マイル、70 マイル、80 マイルを走行することが難しく、バッテリーの管理が必要です。予備のバッテリー、ブースター、またはエクステンダーを用意しておくことも重要です。」とプライス氏は言います。同社 はまた、ツアー出発前に教育資料を送付し、e-BIKE に乗ったことがない人には事前に試乗することを推奨しています。 

 高価な e-BIKE の適切な取り扱いについて人々に教育することも、数日間の旅行では重要です。前述のフエンザリダ氏は、パタゴニアではフェンスに寄りかからないなど、具体的な予防策を参加者に教えることの重要性を強調しています。パタゴニアでは強風で e-BIKE が簡単に倒れ、高額な損害が発生する可能性があるためです。価格面を考えると、適切な数の e-BIKE を用意することもツアーオペレーターにとって重要だと彼は言います。「ツアーを十分に催行することができなければ、ガレージに眠っている多額の不良資産になってしまうので。」

 e-BIKE は一般的に従来型の自転車よりも大きくてかさばり、ソフトウェアのアップデートなど、通常の自転車のメンテナンス作業を超えた手入れも必要です。また、特定のライセンスを必要とするソフトウェアのインストールなど、特殊な維持保守作業が必要になる場合もあります。特に、遠隔地を走行する場合は、特殊な手入れが必要になる場合もあります。

© Creative Lab / Andrew Bassingthwaighte

 アンドリュー・バッシングスワイト氏の経営する「ナミビア・インディビジュアル・トラベル社」は、2005年からサイクリングツアーを提供しています。同社のツアーは、ナミブ砂漠、ソッサスフレイの巨大な砂丘、エトーシャ国立公園などの野生動物観察地など、広大な国の多くの名所が含まれています。同氏はこのツアーを「バイクサファリ」と呼んでおり、同氏のツアーでは e-BIKE の人気が高まっているものの、マウンテンバイクを好む参加者の方が多いと言います。e-BIKE は1日でより長い距離をカバーできるのですが、特に砂漠の遠隔地を旅行する場合は考慮しなければならない点があります。同氏によると、砂漠の厳しい気候も要因の1つですが、重くて大きい e-BIKE は、トレーラーへの積み込みが難しく、充電のために発電機を持っていく必要があるからです。「e-BIKE は非常に繊細です。私たちの国は埃っぽく砂だらけのため、充電ポートが砂で詰まらないように注意深く扱わなければなりません。e-BIKE は技術的な課題が多い乗り物ですが、従来型の自転車はかなりシンプルな乗り物です。」

 e-BIKE の人気が高まっている一方でオリジナルモデルにこだわる人もいます。米国の「バックロード社」 は、従来型=“アコースティック” な自転車愛好家向けのツアーも開始しました。同社の新しいサイクリングツアーは、ペダルのみの動力によるツアー愛好家を対象としています。例外として、経験の浅い人が “アコースティック”愛好家ツアーに同行する場合には、e-BIKE を使用して一緒に参加することもできます。

 トム・ヘイル氏は、同社の創設者兼社長・CEO です。彼は、1979 年の会社設立以来、サイクリングツアーを運営しています。現在、同社の顧客の多くは e-BIKE を利用していますが、クラシック モデルを好む顧客もたくさんいます。「“アコースティック”な自転車に乗っている人の中には、同じ考えを持つサイクリストと一緒にいたい人がたくさんいることがわかりました。なぜなら、そのダイナミックさがまったく異なるからです」と彼は言います。 

 ヘイル氏によると、以前は “アコースティック” 自転車に乗っている人の多くが先頭を走ってきましたが、e-BIKE のスピードが状況を一変させ、例えば “アコースティック”自転車に乗っている人は昼食時間に遅れて来るようになったと言います。ヘイル氏はまた、物理的な仲間意識は e-BIKE 愛好家にはないと評する一方、“アコースティック” 自転車愛好家の多くは、同じ仲間と絆を深めることのできる選択肢を求めており、それが彼の会社が “新しい” ツアーを提供している理由だと語ります。「これはまったく新しい分野ですが、実際にはそうではありません。未来への “回帰” なのです。」

© ATTA / Border Free Media – Kristen Kellogg, ATWS 2023

(画像出所:ATTAニュース)(本文・和訳)

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