【正会員便り】第3回は「ラップランド(フィンランド)へのオフシーズン旅行」です。
今回も精力的に活動されている個人正会員/髙井様による寄稿です。画像も全て高井様からご提供いただきました。
【正会員便り】「ラップランド(フィンランド)へのオフシーズン旅行」
Small Impact 合同会社 代表社員 高井 雅彦
9月の中旬に、北欧フィンランドのラップランド北部イナリ地方の村イヴァロ(人口:約3千人)に夫婦で3泊4日のスケジュールで滞在した。車がなかったので、毎日1万5千歩程度を歩く旅になったが、そのオフシーズン旅行をアドベンチャーツーリズムの視点で考察してみることとする。ちなみに、今回利用したイヴァロ空港はカーボンネットゼロを既に実現している空港の一つである。
ラップランドのピークシーズンは、言わずもがな、オーロラが綺麗に頻繁に出現して、スノーモービルやノルディックスキーで遊べる冬である。訪問した9月中旬は、夏休みが終わり、紅葉にはまだ時間があり、オーロラの出現確率はさほど高くないという微妙なオフシーズンであったが、夏から秋の変わり目の滞在中の気温は、日中の20度超えから夜間の3度までと大きく変動した。
まず宿について。滞在したホテルは、Green Key Program に参加しているという理由で、部屋のタオルやリネン交換は一週間に一度と決められており、部屋に乾燥機能もないため3泊目に濡れたままのタオルを交換したいと申し出たら見事に断られた。(5ユーロを払えばタオル交換をしてくれるようである。)また、50室以上ある中規模ホテルではあるが、フロントの営業時間は朝8時から夜9時までとなっており夜間は閉じられている。客室に電話もない。サウナ付客室もあったが、我々はサウナ無しの一般客室に泊まったのでサウナは有料だった。(一人10ユーロ、1時間貸切りは30ユーロ)但し、サウナに入った後、そのまま近くの湖で体験した冷水浴(水温は15℃くらいか?)は、景色も含めて最高であった。フィンランドの町中には余計な広告看板はなく、この湖の周りだけでなく、何処もかしこも景観がよく保たれている。
有益だったのは、初日に受けた60分の「オーロラ情報レクチャー(有料)」である。このレクチャーでは、オーロラの発生メカニズムや写真の撮り方だけでなく、お薦めのオーロラ予報アプリを教えられた。滞在中はこのスマホアプリが大活躍することになる。この予報アプリは、登録地点でのオーロラ出現確率を、日付ごと時間ごとに%で予報表示してくれて、また、頻繁に更新される。この予報アプリで教えられた確率が高い時間帯になったら外に出てオーロラを探すことが滞在中の習慣になった。滞在中、オーロラがよく出現する時間帯は毎日異なっていたのだが、このアプリのおかげで毎晩オーロラを観察することができたことは素晴らしい。
次にアドベンチャーツアーである。今回、夫婦でゆったり滞在したかったこともあり、全て現地発着型の半日程度の英語ツアーを組み合わせた。基本ワンオペで、地元に長年在住するツアーガイド一人が、ホテルからの送迎、バンの運転、ガイド、飲食などのサービス提供を行なってくれた。オフシーズンということもあり、週末以外は何れも空いていて、ツアー客は自分達だけというツアーもあった。
まず、「秋の森林歩きツアー」は、イヴァロ以外でもヘルシンキ郊外やタンペレ郊外でも参加したが、基本パターンはどこも一緒である。「秋の森林歩きツアー」は、自然観察的要素や森林浴的要素はあまりなく、整備された森林道を歩いていき、自然享受権に沿って自然植生のベリーを摘んで食べ、最後にソーセージのバーベキューを賞味する。公共のバーベキュー施設(薪も常備)や小屋が綺麗に整備整頓され、無料で利用できるのはさすがフィンランドである。
次に、この地域の目玉である「オーロラ追跡ツアー」である。出発時間はオーロラが出現しやすくなる夜9時頃となり、この時期といえども結構寒い。山に行くツアーと湖に行くツアーがあったが、良かったのは湖に行くツアーだった。フィンランドで三番目に大きいイナリ湖でボートの上からオーロラを見るツアーに参加したが、オーロラが綺麗に見える夜ではなかったものの、湖水の上からだと障害物が一切なく、空が広く見えて非常にプレミアム感があった。
変わったツアーとしては、「ハスキー犬と行くハイキングツアー」があげられる。ツアーの事業者は、冬の犬ぞりツアー用にハスキー犬を160頭ほど飼育しており、その犬に引っ張ってもらいながら森を歩くというツアーである。初めて体験する面白いツアーであった。
アドベンチャーツーリズムの要素でもある「没入できる文化体験」に触れることができたのもイヴァロのよさである。ここでは、原住民サミ族の歴史や風俗、ラップランドの自然について広く展示する国立のSami Museum and Nature Center SIIDA(https://siida.fi/en/) を見学した。この博物館は、今年のEuropean Museum of the Year 2024 にも選ばれたフィンランド屈指の博物館である。野外のOpen Air Museum もあるが、ここの良さは地域のテーマを深掘りしたことだけでなく、映像や音楽を活用したハイテク展示法にもあると思った。(SiidaのYOU YUBEはこちら。)
フィンランド人は自然環境やサステイナビリティへの意識が高く、英語が通じて比較的安心・安全で親日的であるため、スケジュールが許せばもう少し強度のあるアドベンチャーツアーにも参加したかったところである。物価が高かったので、外食だけではなく、スーパーで調達した食材も食したが、旅行全体の満足感は高かった。ただ、この時期は、現地発着型ツアーの選択肢が少なく、ツアーは玉石混交のようだった。反省すべきこととしては、旅行者としては、もう少し事前に調査をして的確に注文・交渉をしていくことが必要だったかもしれない。レストランで提供されるカロリーの高いコース料理について、交渉すれば低カロリーメニューに変更できることがわかったのは最終日の夕食の時だったので…。
以上