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【正会員便り】を始めます。第1回は「観光先進地“バリ島”で体験したアドベンチャーツーリズム」です。

 お陰様でJATO活動の趣旨に賛同して入会いただいた会員様の数も徐々に増えてまいりました。その一方で、「この会員様の事業内容をもう少し知りたい」「個人会員様はどのような方がいらっしゃるのですか」「他の会員様との連携を模索したいけれどネットワーキングへのリアル参加が難しい」等々のご意見もいただくようになりました。こうしたご意見への一助となればとの思いから、JATOでは正会員様の会員メリットである「HPへの寄稿」を通じて、会員様相互の協業機会の創出や広報支援などに繋がればと考え、【正会員便り】を開始することにいたしました。

 栄えある第1回は、個人正会員「Small Impact 合同会社代表 髙井雅彦様」から寄稿いただきましたのでぜひご一読ください。高井様は、今年4月にスェーデンで開催された GSTC2024 Global Conference の Academic Symposium に個人として登壇され「Amboseli National Parkの公園管理とツーリズム」についてプレゼンテーションをされるなど、インバウンド事業のみなずグローバルな活躍をされています。

【正会員便り】観光先進地“バリ島”で体験したアドベンチャーツーリズム

 Small Impact 合同会社代表 高井 雅彦

 2024年5月に「あいだの探索・実践ラボ」(一般社団法人Ecological Memes)主催の海外フィールドワーク「バリの信仰に根ざした山川里海の連環システム~人と自然のあいだをつなぐ伝統知、地域コモンズ、リジェネラティブツーリズムをめぐって~」に参加して、インドネシアのバリ島を訪れました。バリ島は「伝統と革新」が混在した観光先進地です。今回、ここで体験したアドベンチャーツーリズムを、「伝統と革新」の観点から紹介しようと思います。バリ島ではヨガやスパなどのウエルネスツーリズムも体験し、次世代型ラグジュアリーホテルのSix Sensesなども見学しました。なかでも 「伝統」もしくは「革新」に大きく振れたアクティビティやホテルに魅力を感じました。

1.マングローブ植栽カヤックツアー

 Desa Potato Head というB Corporation の先進的なホテルが提供するマングローブ植栽とゴミ拾いを兼ねたカヤックツアー(半日)に参加しました。このツアーのユニークな点は、客と従業員が一緒に活動することです。私はホテルのバーテンダーと同じカヤックに乗り、雑談しながらカヤックを漕ぎ、海洋ゴミ(主にプラスチック)を拾い、マングローブの植栽を行いました。このホテルはRegenerative Hospitalityを掲げており、客室も環境に配慮され、建物も洗練されており、ベジタリアンレストランもあって革新的であり、従業員の対応も全般的に心地良いものでした。

2.Tigawasa村への山岳トレッキング

 バリ島北部のBanjar地区にあるTigawasa村へテント泊のトレッキングに出かけました。途中、乗っているミニバンのタイヤから煙が出るトラブルがありましたが、無事に到着。森林の中にある神聖な場所には「一礼をして入り、無言で通る」ように指示をされましたが、確かに神聖な場所は植生などが明らかに違うということを感じました。この地域では、森と海の双方に神が宿るとされるアニミズムが伝統的に信仰されています。トレッキング後のココナッツジュースは格別でした。また、テント泊をした村の家長は大卒で英語が堪能であり、戦時中に日本軍から指導されたという竹細工も見事な腕前でした。森の中の屋外シャワーも格別な体験でした。

3.ウブドのエコホテル

 ウブドの街中のEarth Companyが運営するエコホテル Mana Earthly Paradise は、Regenerative Hotel を実践していて、先進的かつ革新的です。施設内の照明は太陽光発電、水は極力雨水を利用、建物は廃材をリサイクルして建てられ、施設周辺では在来種が食材として自然農法で育てられています。オーナーの濱川夫妻は世界中で社会起業家も育成しており、視野が広く興味深い話を聞くことができました。

4.Penarungan村での田植え体験

 バリ島の伝統的な水利組織スパックについて学び、田植えを体験しました。バリ島では昔から水利の共同利用が課題であったため、各地にスパックという共同体組織が設立され、公平な水の配分や用水路の管理だけでなく、祭祀を主催して紛争を解決するなどしてきました。農村ではバリ・ヒンドゥー教が信仰されており、毎日チャナン(お供え物)を複数の場所にお供えする習慣には驚かされました。

5.旅を終えて

 コロナ禍以前から、オーバーツーリズムが問題となっていたバリ島ですが、サステイナビリティを視野に「伝統」か「革新」に大きく振ることがツーリズムには大事なことではないかと学びました。バリ島では、ロシア人の大量移住を吸収する「リトル・モスクワ」の建設、そして今年2月から始まった「バリ州外国人観光税(入島税)」の使途がホットな話題です。島内は、高速道路が少ないため、道路渋滞が引続き大きな課題となるでしょう。尚、各宿泊先のホテルマネージャーとの話では、まだコロナ禍以前の需要には戻っていないとのことでした。
 今回利用したランドオペレータ Five Pillar Experiences は、田舎の優秀な社会起業家をローカルヒーローと位置付けてバリ島全体から選抜・組織化し、彼らにバリ島の自然・文化・歴史を踏まえたストーリー構成をさせ、ユニークな体験を語らせることでAT推進に繋げていました。同社では、主に欧米の旅行会社からの受注が伸びていることも参考になりました。

以上

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