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AT先進地域を参考に、自分の地域にどう取り入れるか

マイク・ハリス理事

KODO合同会社 CRO(Chief Refreshing Officer) / 株式会社キャニオンズ 代表

Q.2社の事業内容についてお聞かせ下さい。

 KODO合同会社は三つの事業部門で構成されています。まずガイド派遣事業です。AT要素も含むインバウンドツアーを専門にアテンドするガイドを、全国で170名ほど契約しています。2つ目はAT受注型企画旅行事業です。欧米豪の旅行会社と取引をしていますが、主な取引先は北米の旅行会社です。富裕層を対象とした10日間~3週間程のツアーをカスタムメイドしています。一人1日当たりの平均手配金額は10万円~15万円と高額です。熊野古道や中山道、北みちのくトレイルなどの人気の高いルートを周遊する商品から、里山サイクリング、日本酒蔵への立ち寄り、農泊など、ユニークな商品も提供しています。最近も九州をサイクリングして巡るツアーも実施しました。3つ目は、これが一番重要ですが、インバウンド誘致のためのコンサルティング事業です。自治体やDMO、DMCが対象で、現在は7つの地域を請け負っています。単にアドバイスをするだけではなく、集客にまで結び付けたいとの思いから、商品造成から販売まで一貫した支援を心掛けています。こうした支援を責任持って行うことが一番の地域貢献と考えてきました。KODOを設立したのは、そうした思いを実現させるためです。インバウンド需要が回復した現在では、会社事業も好調で、応需能力を増やさなければと考えているところです。

 次に株式会社キャニオンズですが、こちらはATアクティビティ事業の運営がメインです。所謂“ハードなアクティビティ”のキャニオニングとラフティングを専門に始めましたが、ケービングなどの商品も徐々に増やしています。20年程前にインターナショナルスクールから、「学生にATを通じたアウトドア教育を行いたい」というリクエストがあり、AT体験にチームビルディングなどの教育的要素を取り入れる工夫をした結果、そこから「アウトエデュケーション事業」が確立していきました。日本のインターナショナルスクールのみならず、中国・韓国・東南アジアからの需要もあります。プログラムは3日間~1週間が主流です。

Q.アクティビティ事業運営で工夫をされた点などお聞かせください。

 お話ししたように、当初は夏季(7月~9月)のアクティビティを専門にしていましたが、スタッフの増加とともに年間を通じて安定的な雇用を提供することが不可欠となっていきました。スタッフからも「冬も働きたい」という声が多く上がるようになり、スノースポーツを始めました。最初はスノーシュー等のソフトアクティビティからスタートしましたが、スタッフにスキー指導者検定資格を取得させて、インバウンド相手のスキーレッスンも開始しました。当時は近隣のスキー場へのインバウンド需要が増えてきた頃で、どのスキー場でも「外国人スキーヤーの対応に困っている」との声が挙がっていたため、冬場の事業対策としてスキー場の外国人対応を業務委託する事業を開始しました。今では多くのスキー場と連携しています。また、豪州欧州の上級者向けのバックカントリーツアーや、スノーキャニオニングをした後に、みんなで飲んだり食べたりするスノーケータリングといった商品も提供しています。どうしても、アウトドアアクティビティにはシーズナリティがあるので、応需体制の強化や、雇用機会の均衡を促す意味でも、幅広いアクティビティを展開するように心掛けています。

Q.KODOのガイド派遣事業ですが、それぞれの地域に居住しているガイドと業務委託契約をしているのですか。

 そうです。大半が通訳案内士ですが、それ以外にも通訳ガイドができるレベルに達している方と判断できた方であれば契約をしています。その為、スケジューリング作業はかなり煩雑になります。専属契約の方もいますが、フリーランスで働いている方もいるため、インバウンド需要が戻ってきた今ではガイド不足の状況と感じています。

Q.同じく、コンサルティング事業の依頼状況と、地域ごとのAT理解度をどのように感じているか教えてください。

 ATは少しずつ日本に浸透してきましたが、自分の地域がAT推進に向いていると思っていても進め方がわからないので支援して欲しい、という依頼が殆どです。理解度に関してもまだまだばらつきがあります。セミナー等を通じて説明しても、充分理解できない部分もありますし、先入観で「激しいもの」「リスクがある」とイメージしている人もいます。そもそも、この20年間でもATの定義はかなり変遷しており、当初はリスク(危険要素)を含んだツーリズムとして認知されていましたが、UNWTOがATTAと纏めたレポートでようやく3つの要素のうち2つを含むツーリズム、という定義に辿り着きました。JATOからの情報発信も重要ですが、メディアがもっと情報発信してくれたら、理解度が深まるのではないかと思っています。

Q.マイク理事は日本全国で活動をされています。地域からの依頼で赴くケースが多いと思いますが、自ら赴くケースはどのようなものがありますか。

 後者の例で言うと、紀伊半島には20年来インバウンドのお客様を案内してきました。この地域の資源は世界水準でみてもトップレベルのため、いつの日かこのような地域でATアクティビティを運営したいと思っていました。10年程前から熊野古道でアウトエデュケーション商品を定期的に始めたところ好評で、年々周辺地域への滞在リクエストも増えたため、ここに我々の拠点が欲しいと思い、和歌山県や地元の旅行会社に相談していたところ、隣の三重県から紀宝町を紹介していただくことができました。幸い町長も協力的であり、熊野古道からの距離や紀宝町の天候などにも恵まれ、理想の拠点を築くことができました。決して大都市からのアクセスは良いとはいえませんが、時間をかけてまで行く価値がある場所になりました。今後はアクティビティや熊野古道ルートを増やしたいと思っています。

 日本全国には自然文化資源が豊富に存在しますが、それらが尖っていないことには、お客様を呼び込むまでに至らないと思っています。アクセスが難しいところであれば尚更です。観光で地域を活性化するためには、その地域ならではのストーリーを使って如何にコンテンツを差別化していくか、が重要です。自分たちの地域だけを見ているだけでは、近隣地域とコンテンツが被ってしまうこともありますので、アンテナを高くして、自分の地域のコンテンツを尖らせることを徹底していただきたいですね。

Q.日本におけるAT推進に向けた課題をお聞かせください。

 しっかりとしたレギュレーション(規制・規則)を作ることです。例えば、今の時代、簡単にアクティビティ運営会社を作ることができてしまいます。ニュースでは取り上げられることが少ないですが、実際には事故の発生率も高いです。安全管理面の問題もありますが、事業者が増え過ぎてしまうことで、価格競争が過熱して収入が減り、ガイドが魅力的な仕事として受け入れられない悪循環も生じます。サスティナブルな産業にするためには、資源・体験・安全の質を落とさないための規制や規則が必要です。観光庁などにはこうしたビジョンを発信して欲しいと思います。

Q.今後ATに取り組もうとしている地域や事業者に対して伝えしたいことは何ですか。

 ATを推進するに当たっては、先進地域の事例を参考にすることは大切です。自分の地域を想像力だけで設計・運営するのではなく、良い事例を参考にすべきです。そして、良いものは徹底的に真似をする。良い事例をどんどん自分の地域に組み入れながらオリジナリティを出す。日本でも良い事例はありますし、海外に出かけて本場ではどういう期待を抱いてATに参加されているのかということを、自分の五感で感じとることも重要です。

 また、地域のステークホルダーを全て巻き込むことも重要です。特に、行政の方々にATを理解していただくことは非常に重要です。地域の財布の紐を握っているのは誰かということを「理解している」と「いない」では、地域活動に大きな差が出ます。AT推進は、1~2年だけで達成できるものではなく、時間をかけて長期的に取り組んでいくという姿勢も大切です。

Q.地域の資源の見つけ方として、どのような方法を推奨されますか。

 想像力を高めることが大事ですが、自分が1つの地域に住んでいると、地域の本来の価値が見えづらいことも事実です。その為、自らが外に出て外から地域を見てみることや、地域マーケティングに適した地域の価値が判る外部人材にアドバイスをもらうということもお勧めです。国内外で多くの価値あるものを見ている人には、判るものです。

Q.アドベンチャーツーリズムアカデミー(ATA)運営に際してのアドバイスやご意見をお聞かせください。

 どの地域においても、キープレイヤーが重要な役割を果たすため、どんどんATAに参加して、単に教えを乞うだけではなくお互いにアイデアを交換しながらレベルアップしていくということが重要です。また、自分の地域の事だけを考えるのではなく、横の繋がりを意識することで相乗効果が得られると思うので楽しみにしています。

 長期的視点に立つと、ツーリズム全般を推進する上で今一番重要だと思うことは「教育」です。今の小学生、中学生、高校生など、地域にいる子供たちが地域に愛着を持つことができるように、地域の資源をしっかり体験して学ぶことで、自分の地域にはこんなにも素晴らしい資源があるのだとわかってもらうことがとても重要です。地域の価値を分かっていない若者は、地域から離れてしまいます。地域の価値がわかっていれば、一旦出てもまた戻ってきたり、そもそも離れなかったり、その地域で働きたいと思うようになります。文部省の管轄範疇とは思いますが、ATAでもそうしたことを配慮するようなプログラムが進められれば良いですね。

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