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「自然に帰る」ATを大きな転機に

日本アドベンチャーツーリズム協議会
代表理事 大西雅之
( 阿寒アドベンチャーツーリズム代表取締役 )

ATが持つ「潜在力」の周知を図る

Q.本格稼働から1年が経過した日本アドベンチャーツーリズム協議会について、改めて、ご説明いただけますか。

 日本のATを牽引していこうという強い志や経験・知見を持つ組織や企業などの関係者に集まっていただき、ATをしっかりと日本に根付かせていきたいというのが協議会としての目標です。ATには文字通りの「冒険旅行」といったイメージもありますし、ATとしてレベルの高いアクティビティもありますけれども、最も人気の高いアクティビティはトレッキングやハイキングであり、その多くは普通の旅行で参加できるものですから、そういう認知を広めていくのも協議会の役割であると思っています。

Q.ATの市場性や経済性などについても、お聞かせください。

 AT旅行者の特徴として、教育水準の高い富裕層の割合が高く、平均で14日間という長期滞在の志向性を持ち、アウトドアギアにもこだわる傾向があることから、経済波及効果が大きいと言われています。マスツーリズムでは沢山の人数によって実現されている経済効果が、ATではその20分の1とか30分の1といった規模で達成できるのも大きな特徴です。また、ATには、日本の各地域における経済活性化を強力に推し進めていく求心力も備わっています。

 ATの取り組みは、地域の自然や文化を大切にし、経済的な貢献の重要性への理解に基づいていますから、地域の観光資源や観光資産を経済価値に結び付けていくこともできると考えています。北米や欧州、南米の主要地域では、各国の国内市場を除く国外での消費額だけで76.5兆円にも及ぶ経済効果があり、雇用創出の効果も通常のツーリズムに比べて1.7倍も大きいという事実も確認されています。ただ、日本ではまだそうしたATの持つ潜在力について、あまり知られていませんから、そういうことをしっかりと伝えていく必要もあると思いながら、協議会としての活動を続けています。

Q.ご自身も阿寒アドベンチャーツーリズムの代表取締役として、地域でも活動をされているわけですが、その取り組みについても教えていただけますか。

 阿寒観光協会まちづくり推進機構の実行部隊として2018年4月に設立され、阿寒湖温泉が持つ豊かな自然環境と地域独自のアイヌ文化を活かしたATを推進してきました。地域における自然×異文化×アクティビティを体感するATの先導会社として阿寒湖温泉の価値の最大化を図るため、国際ブランドとしての“Akan Lake Resort”の中核となるATのガイドツアーや滞在プログラム事業の開発と運営、マリモ関連事業、白湯山トレイルガイドツアー、ATコンテンツの開発・商品化・販売、アイヌ民族のガイド養成といった活動を行っています。
 
 来年9月の札幌での開催を目指し誘致を進めている「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)2021 北海道」のプレサミット・アドベンチャーのプロバイダーとして選定されたのも、これまでの取り組みや活動が認められたものと受け止めています。

「ATWS2021」通じ世界にアピール

Q.現在の旅行業界やツーリズム産業が置かれている状況の中で、ATの意義をどのようにお考えになりますか。

 アクティビティを通じて、地域の文化と自然に触れることで、旅行者自身の成長や変革につながっていく新しい旅行がATです。ツーリズム産業全体が存亡の危機とも言うべき難局に直面する中で、これから何年もかけて失われたものを取り返していく時に、「自然に帰る」ということが大きな転機をもたらしてくれるのではないかと考えています。単に自然の中を散策したり、自然の中で美味しいものを食べたりということにとどまらず、さらに踏み込んで地域を探求するのがATであり、非常に奥が深い世界です。しかも、先ほども言ったように、既に75兆円を超える規模の需要が存在しているわけですから、我々が向かおうとしているATマーケットは、大変にやりがいのある分野であると言えます。

 協議会では、(1)理解を深めるためのATセミナーの開催、(2)各地域におけるATの取り組みに向けたエリア診断や助言・支援、(3)ATガイドの育成と認証制度の整備、(4)世界組織であるATTA関連のグローバルイベントの日本での主催・運営、(5)国内・海外向け情報発信と国内外のネットワーキング機会の提供、(6)AT関連の調査研究と発信、という6つを活動の柱としていますけれども、特に、地域での取り組みの契機となるセミナーの開催と実際の取り組みに当たっての助言・支援が大きな役割になるだろうと考えています。

Q.「ATWS2021 北海道」は協議会の活動に拍車をかけるという意味合いから、その開催意義も非常に大きいのではないでしょうか

 札幌での開催を誘致しているATWSも、自然や食を楽しんでもらうだけでなく、将来に向けて発信する内容がなければ、世界から評価してもらうことはできません。

 イタリアやスウェーデンで開催されたATWSに出席して、プレサミット・アドベンチャーのツアーに参加してきましたが、地域性やテーマ性を前面に打ち出した極めてクォリティの高いコンテンツを通じて、様々な事を深く考えさせられました。現在誘致を進めている来年のATWSでも、事前のツアーは北海道だけでなく、沖縄をはじめ日本全国での実施を予定しており、地域におけるATの取り組みを見てもらう絶好のチャンスです。既に、ツアーの実施予定時期は決まっているわけですから、各地域の皆さんには全力を挙げて取り組んでいただかなければなりませんし、協議会としてもそのサポートをしっかりと行っていかなければならないと思っています。

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