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「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の方法で

白石将理事

日本航空株式会社 ソリューション営業本部 ソリューション営業推進部 担当部長

Q.担当部門の事業内容ついてお聞かせください。

 日本航空では、事業拡大のために、主力の人や物を運ぶ航空事業領域に加えて、非航空事業領域の推進を強化しています。グループ経営戦略として、まずESG戦略(価値創造・成長を実現する最上位の戦略)を掲げ、中長期的な成長を目指していますが、私共の部門では、「移動を通じた関係・つながりを創造することで社会的・経済的価値を創出する」ために、「地域の魅力を掘り起こして発信をすることで新たな需要を創出し、都市圏と地域の双方向に新しい人流を生み出し、日本全体の活性化に貢献する」ということをミッションに掲げて事業運営をしています。

Q.日本航空が就航していない地域もあると思いますが、そのような地域の活性化も行っているのでしょうか。

 確かに主な営業活動は就航路線の国内支店がある地域に偏りがちですが、地域の魅力発信は国内だけではなく海外にも行っていますので、日本全国がその対象となります。実際に、福島県は未就航地域ですが、福島県の酒造の魅力を発信するなどしてきています。海外の観光客の方々に、まずは日本に来ていただくことが大事ですので、そのきっかけを作るために日本全国の魅力を発信していきたいと思っています。もちろん、全ての方に日本航空を選んでいただけるという訳ではないのですが(笑)。

Q.日本航空グループでのATへの取り組み事例を教えていただけますか。

 地域創生の施策と考えるニューツーリズム事業のなかで、ATは最も重要な事業領域の1つと位置づけています。国内マーケットだけではなく、海外インバウンドもターゲットとして、日本の自然・文化・歴史などの魅力を強く訴求していく取り組みをしています。

 国内マーケット向けには、道東の釧路湿原に近い鶴居村で、特別天然記念物のタンチョウの生息環境を間近に見ながらネイチャーツアーを体験するAT商品等を企画販売しています。海外マーケット向けには、国内DMCとの協業で開発したAT商品や業務提携している(株)KAMMUI社が監修したAT商品などを、訪日ダイナミックパッケージ*1 を利用して13か国に販売展開をしています。

 また、ATWSを始めとする海外のAT商談イベントに出展をしたり、JNTOと連携するなどして、日本のATの認知度を向上させる取り組みも行っているところです。

*1…JAL Vacations (Flight & Hotel) 名称で展開しているインバウンド向け商品

Q.ATに期待することをお聞かせください。

 ATは、オーセンティックな体験価値、つまり、旅行者の感性に響くような体験で自己変革を促すことができるツーリズムだと思っています。そのような素晴らしいAT商品を体験してもらうために、隠れた日本の魅力を発掘して、どのように発信していくのか、というATのマーケティング面も考えていく必要があると思っています。単に、「インバウンドに来て欲しい」「この地域にはこれがある」といった単純な取捨選択ではなく、「この地域はどうありたいのか」という根本的なことを議論してターゲティングを行い、そのターゲットに訴求できるコンテンツを企画造成し、これに携わる人材を育成し、地域の受入れ環境の整備を行っていく必要があると感じています。ATは作ったものを売るという「プロダクトアウト」ではなく、「マーケットイン」の方法で商品造成をしていくべきである、ということです。地域のコンテンツや人材を活かすために、誰に対して訴求していくのか、しっかりと見定めて取り組んで行って欲しいと思います。その上で、そのようなAT商品を、地域のガイドの皆さんが魅力的に演出できるように、JATOとして様々な知見蓄積を共有して行きたいと思っています。

Q.アドベンチャーツーリズムアカデミー(ATA)に期待することをお聞かせ下さい。

 ATAには、地域の事業者、住民、行政、観光関連事業者といった全てのステークホルダーの方々が同じ方向を向いて、「持続可能な観光地づくり」を行うために力を合わせて活動することができるコミュニティとなって欲しいと期待しています。また、地域のATを推進するリーダー人材の育成に加えて、「アフターフォロー」も同様に重要であると思っています。AT推進リーダーのネットワークを広げていくこと、そして知見やノウハウを皆で共有できること、がATの底上げには非常に重要です。ATAがそのような活動の渦の中心になっていって欲しいと期待しています。

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