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訪日旅行促進の大きな柱に

日本政府観光局(JNTO)
亀山秀一 理事長代理

成功事例を積み重ねて、ATを日本各地に波及

Q.日本のインバウンド振興におけるアドベンチャー・ツーリズム(AT)の役割について、どのようにお考えになりますか?

 JNTOが訪日プロモーションを実施する際に、従来は富士山や桜、寺社仏閣、伝統文化、日本食といった魅力を中心に発信してきましたが、欧米豪市場を中心にプロモーションを強化するに当たって改めて市場調査を行ったところ、豊かな自然、アウトドアアクティビティへの関心も高いことが分かりました。そこで、これらについても前面に打ち出してプロモーションを行うようになってきました。「自然」「異文化体験」「アクティビティ」のうち2つ以上の要素から構成されるATは、まさにこれにぴったりあてはまるものであり、四季折々の美しい自然や有形無形の文化を持つ魅力的な地域が数多く存在する日本への旅行を促進する上で大きな柱の一つとして、今後も積極的に打ち出していきたいと考えています。

Q.2021年に札幌で開催されることが内定した、ATの世界会議である「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)」への期待をお聞かせいただけますか?

 JNTOとしては、MICE誘致の観点からもATWSの札幌での開催内定を喜んでいますが、日本でのATの普及や訪日プロモーションという点でも大きな弾みがつくものと期待しています。世界各国から旅行会社や観光局・観光協会、ガイド、アウトドアメーカー、メディアなど800人もの関係者が参加するATWSは、日本、特に北海道の持つATデスティネーションとしての可能性を内外に知らしめる絶好の機会になります。同時に、北海道にとっては、地域経済へのインパクトや自然環境と地域社会との調和など、持続可能な観光への親和性が高いATへの理解を地元で深めるという意味合いからも、札幌で開催されることの意義は大きいと思います。北海道では、ATを楽しむ外国人旅行者の満足度を高めるためにガイドの育成が進められていることに加え、知事もATWSの誘致を通じた北海道観光のさらなる魅力発信を公約に掲げています。今後ATを1つの軸に訪日旅行をプロモーションしていくためにも、道内でATの取り組みが広がって成功事例が積み重なり、国内各地へも波及していくことを期待しています。

各地でプログラムづくりを

Q.ATWSを主催するATの国際組織であるアドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)は、欧米を中心に1000を超える会員を擁しており、その大半を占める各国の旅行会社には多くのAT顧客が存在しているため、国際旅行マーケットにおいても、AT市場は有望なセグメントとして注目が高まっていると言われています。JNTOとしての期待をお聞かせください。

 流通システムも含めて、B to Bのモデルが確立されているATは、確かに大きな可能性を秘めたマーケットであると思いますが、市場において競争力を持つためには、ATプログラムや旅行商品が、素材やガイド、ルートなどを含めて高品質であることが強く求められると思います。その意味で、日本アドベンチャーツーリズム協議会には、地域の関係者に対して、AT市場の顧客や特徴、AT観光地化に向けた取り組みによって得られるメリットなどへの理解を深めるセミナーなどに加え、プログラムや商品開発にもプロフェッショナルなアドバイスをして頂けることを期待しています。日本各地にはATのポテンシャルがあると思いますので、それぞれの地域特性に応じて、AT観光地化に向けた戦略の策定や商品開発、受入環境・体制の整備などを着実に進めていけば、地域観光の振興にも貢献できると考えています。

Q.将来におけるインバウンドツーリズムの方向性にも、ATが一定の役割を果たすことになりそうです。今後日本市場にどのようなインパクトをもたらすとお考えですか?

 新型コロナウィルスの感染拡大は旅行トレンドにも色々な影響を与えると思います。例えば、密閉・密集・密接という「三密」を避けるという観点から、地方都市やアウトドアへの旅行者の流れが拡大していくと予想されますが、そのような新しい旅行需要に対応するコンテンツのベースとして、ATのコンセプトが一つの主流を形成していく可能性は極めて大きいと思います。「明日の日本を支える観光ビジョン」の施策として打ち出された「国立公園満喫プロジェクト」や「日本遺産」といった取り組みも、国内各地に存在する「自然」と「文化」の魅力をストーリー仕立てで内外に発信する流れを加速させるものであり、ATのプログラムづくりにもつながると期待しています。JNTOとしても、全国各地のATプログラムや旅行商品を積極的にプロモーションしていきたいと思っています。

※所属・役職は取材当時の情報です。

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